ユートピアと実存

   ユートピアにおける一人一人の実存はどうなっているのでしょうか。幸せとはいえ皆変わり映えのしない単調な人生を送っているのでしょうか。
   いえいえ、ユートピアにおいてこそ、それぞれの人生は真にその人自身の実存となるのです。
ユートピアにおいては、住民の一人一人が、統計学的な地域社会の人口二十数万分の一、あるいは、人類の人口六十数億分の一とかとしてではなく、この広大な宇宙における、独自の、限られた生命の一回性を生きている実存者として生きていくことができます。
   ユートピアの住民は、他に掛け替えのないそれぞれの絶対的な実存的人生を十全に生き切ろうとします。そして、自分の人生の最高最善を生き切るには、全体世界との本質的な調和が必要不可欠であるということをよく理解しています。つまり、ユートピア社会と一人一人の実存とは一体不可分だということをよく弁えているのです。だからこそ積極的にユートピア社会の維持に努めながら自分自身の実存の充実を図るのです。
   実存は日常的な家庭生活の中に在り、日常的な社会生活の中に在ります。また、自然や動植物との触れ合いの中に在ります。つまり、実存は人生の全瞬間の中に在るのです。ですから、ユートピア市民は、あらゆる生時(しょうじ)を、できる限り本質的な、最高最善の思考と言行とで埋め尽くそうとするのです。そして、後に人生に対する悔いが残らないように努めます。
   ユートピア市民はその実存においてどこまでも本質的な自己自身であり続けようとします。人生に対するそのような実存的姿勢から一人一人の本質的な個性が輝き出ます。
   このようにして、人はユートピアにおいてこそ、現代社会にありがちな反本質的な些事に煩わされることなく、真に実存的な個性を生き切ることができるのです。

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